こんにちは!エンタメ領域のDXを推進するブロックチェーンスタートアップ、GaudiyでデザイナーをしているSuma(@piyojirou224)です。
このTech Blogはいつもエンジニア中心に投稿していますが、今回は初のデザイナーからのエントリです!プロダクト開発で大切な「ユーザーリサーチ」をテーマに書いてみました。
ユーザーリサーチは多くの手法があり、書籍で読んだらなんとなくわかるものの、実践するとなると生の情報って意外と少ないですよね。
そこで今回は、Gaudiyが実際のプロジェクトで実施した2つのユーザーリサーチについて、具体的なプロセスや意識したこと、学びなどをまとめてみたいと思います!
ユーザー中心のプロダクト開発や、ユーザーリサーチに関心のあるPdM、デザイナー、エンジニアのみなさんにご参考になると嬉しいです!
- 1. ユーザーリサーチとその種類
- 2. Gaudiyのプロダクト開発におけるユーザーリサーチの役割
- 3. TIFのプロジェクトでユーザーリサーチを実施した背景
- 4. 実際のユーザーリサーチの進め方
- 5. ユーザーリサーチから得た学び
- 6. さいごに
1. ユーザーリサーチとその種類
ユーザーリサーチとは「ユーザーの特性や物事を達成する際のモチベーションや言動・行動を学ぶために行う調査」のことです。(※こちらの記事が詳しいです。)
簡単に言うと、ユーザーのことを深く理解するために行われる調査になります。
ユーザーリサーチを大きく区分すると、「Generative Studies(生成的調査)」と「Evaluative Studies(評価的調査)」に分けられますが、前者がユーザーの価値観や課題を探り、ビジネス機会を見出すことを目的とする一方で、後者は仮説課題がそもそも存在しているか、考案したソリューションは機能するのかを検証します。
具体的な手法としては、アンケートやデプスインタビュー、フィールドワーク、エスノグラフィーなどが「Generative Studies(生成的調査)」、プロトタイプテストやユーザビリティテストなどが「Evaluative Studies(評価的調査)」にあたります。
ユーザーリサーチといっても多種多様なので、何を検証したいかによってその手法を使い分けることが大切です。
2. Gaudiyのプロダクト開発におけるユーザーリサーチの役割
Gaudiyでも、プロダクト開発のフェーズごとに様々な手法を用いてユーザーリサーチを行っていますが、なかでもユーザーの価値観や課題を探りにいく「Generative Studies(生成的調査)」を重点的に行っているのが特徴的かなと思います。
なぜかというと、Gaudiyは「FPaaS(Fan Platform as a Service:エフパース)」という、ファンとIPコンテンツを直接つなぐプラットフォームサービスをSaaS的にエンタメ企業に提供していますが、そのプロダクトのユーザー属性はIPごとに大きく異なるからです。
たとえば、身の回りの人を思い浮かべてみてほしいのですが、マンガのファンとアイドルのファンでは、雰囲気や趣味など結構違うのではないでしょうか? また、同じ「マンガ」というカテゴリであっても、作品のジャンルによって年齢や性別などファン層は異なるはずです。
だからこそ、プロダクトを通じてファンに最良の体験を届けるために、個別IPのファンを深く理解することが大切です。その上で、クライアントとも共創しながら、ファンの特性に合わせて機能をカスタマイズしています。
またGaudiyでは、NFTやブロックチェーンなどの新しい技術をプロダクトの裏側で活用しているため、機能を開発する前に「どのような体験にすればファンに受け入れてもらいやすいか」を十分に検討する必要があります。
そこでサービスの企画前や、機能要件の設定前、リリース後などのタイミングで、インタビューやフィールドワークなどを中心としたユーザーリサーチを実施しています。また開発においては、このユーザーリサーチで作ったペルソナをもとにユーザーストーリーマッピングを作成し、開発要件の洗い出しをチームで行っています。
3. TIFのプロジェクトでユーザーリサーチを実施した背景
ここからは、実際のプロジェクトを例にしてご紹介したいと思います!
今年10月に開催された、フジテレビ主宰のアイドルフェス「TOKYO IDOL FESTIVAL(以下、TIF)」のプロジェクトでは、サービスの企画案を具体化していくために6月頃からユーザーリサーチを始めました。
その理由としては、大きく3つあります。
ひとつは、いままでGaudiyが提供してきたマンガやゲームのコミュニティとは、ファン層が違うことが予想されたこと。
ふたつめに、複数のIP(アイドル)をひとつのコミュニティで扱う形は今回が初めてだったので、大規模な改修が必要だったこと。開発コストをなるべく抑えつつ、ファンのニーズを満たすために、どんなファンがいて、なにに価値を感じるのかの理解は必須でした。
最後に、企画案を出すにあたり、取っ掛かりとなるヒントがほしかったこと。TIFとしてもオンラインコミュニティは初の試みだったため、これまでの知見がなく、ゼロベースで企画を立てなければいけませんでした。
こうした理由から、まず「どのようなファンがいて」「どんなライブの楽しみ方をしているのか」を探るために、アイドルライブでのフィールドリサーチ(観察&インタビュー)と、社内のペルソナに対するデプスインタビューを実施することにしました。
4. 実際のユーザーリサーチの進め方
では、具体的にどのようにリサーチを進めていったのか、そこで何を意識していたのかを思い出しながらまとめてみます。
4-1. 潜入フィールドリサーチ(観察&インタビュー)
まずフィールドリサーチとして、地下アイドルのライブと、TIFに先行する「mini TIF」のライブに潜入し、そこでユーザーの観察とヒアリングを行いました。
たとえば地下アイドルのライブ会場では、
- 場内の人の分布
- ファンの服装や雰囲気
- 前方と後方の座席ではどんな人が座っているか
- 推しアイドルの出番前後でどんな反応をしているのか
といった「状態」や「行動」を観察しました。(ちなみに推しを聞き出すのは、ひとりで来ていらっしゃる方の隣に座って話しかけるのがスムーズでした。)
この観察から、たとえば「推しのグループの出番中ずっと反応している人もいれば、推しがステージの前に来た時だけ控えめに反応する人もいる」「グループの入れ替わりにより観客も入れ替わる(出番後の物販のためすぐ会場の外に出る)」といったことがわかりました。
さらに、その行動の背景を探るため、推しの出番が終わった2名のファンの方にお声がけして、直接インタビューをさせていただきました。
具体的には、以下のような質問をしました。
- 応援し始めたきっかけはありますか?
- どのくらいの頻度でライブに参加されていますか?
- 周囲より控えめな応援だった気がしますが、いつもと同じですか?
- アイドルフェスに行ったことはありますか?
こうした質問を通じて、おふたりの共通点として「元々は地上アイドルが好きだったけど、友人に教えてもらったり、ライブ配信アプリで可愛い子を見つけてハマった」という経緯があることがわかりました。
また、元の地上アイドルに戻らない理由としては、「距離感の近さ」「実際に会って話せること」「写真を撮れるから」といった回答があり、ファンが地下アイドルに感じている価値の共通項などを導き出すことができました。
ヒアリングを通じて得られたペルソナは、社内で「楽しんでもらいたいのはこういう人」というイメージを共有するために、簡単にスケッチをしてまとめました。
4-2. デプスインタビュー(社内インタビュー)
次に、アイドルファンの中でも、アイドルフェスに行くようなペルソナの解像度を上げるため、社内でTIFに何度か参加したことのあるメンバーにデプスインタビューを行いました。
社内インタビューでは、信頼関係のベースがあるため、より深いところまで聞けるというメリットがあります。
この際、ヒアリングで気をつけていたのは、自分の解釈を「こういう認識であっていますか?」と当ててみて、返ってくる反応を見ることです。というのも、結局ユーザーの認知の中で体験の良し悪しを判断されてしまうため、こちらの推測が「あくまで相手の認識に沿うものであるのか」を確認することを意識していました。
そして、1時間ほどのインタビューを通じて「この人からみたアイドル界隈はどういう関係になっているのか」というCultural Model(文化モデル)を作りました。
このCultural Modelをもとに、インタビューから得られた情報を整理し、関係性を可視化することで、のちに企画をする際のファンの体験設計に役立てました。
こうした手法の異なるアプローチからユーザーのことを理解した上で、実際の企画を詰めていく際には、よりライトにリサーチできるSNSも活用しました。
例えば「エンタメ、NFT」といったワードで検索して、それに対して一般の人はどんな反応を見せているのか、またこれをアイドルファンに提供したらどんな反応になりそうか、といったことを調べ、企画の参考にしていきました。
5. ユーザーリサーチから得た学び
改めて振り返ってみて、ユーザーリサーチにおいて大事だと思うポイントをまとめてみます。
① なるべく多くの一次情報を得ること
まずは、なるべく多くの一次情報を得ることが大事です。対象となる人や状況の観察やインタビューなどを通じて、信頼できる一次情報を社内に持ち帰ってくることがファーストステップになります。
② 発言や行動の「特徴」に気づくこと
次に、一次情報を得ていく中でその特徴に気づくことが大事です。「普通はこう思うんじゃないか?」「こう行動するんじゃないか?」という仮説をなんとなく持った上でインタビューを行うことで、相手の発言との違いに気づくことができます。
また、話の矛盾点もヒントになります。たとえば「人の目なんて気にしない」と発言していた人から、別の文脈では「間違いを指摘されたら怖い」といった発言が出てきたりすることがあります。
この矛盾には、その人なりの背景や認知(=メンタルモデル)が潜んでいることが多いので、それを深掘っていくことでペルソナの特徴に気づくことができます。
③ フラットな目線で分析すること
最後に、分析の際には、個人のバイアスを入れないように気をつけることが重要です。
最初からフラットな目線を持つのはなかなか難しいので、場数を踏んだり他の人からフィードバックをもらったりして、認知の歪みに気づくことが必要になります。実際に、数人が同じ対象を各々で分析すると全然違う見方をしていることがあるので、自分の歪みに気づくきっかけを得やすくなるかなと思います。
ペルソナの発言や実際に目にした反応(=一次情報)を軸にして、飛躍しすぎないように気をつけながら解釈することで、実際のユーザーに近づけていくことができます。
6. さいごに
今回のエントリでは、Gaudiyで実施しているユーザーリサーチの一部を紹介させていただきました。
ユーザーリサーチを通じてアイドルファンの方々を深く理解できたことで、TIF本番では、動画を視聴しながらNFTサインが受け取れるなど、ファンの方々を楽しませるFandomな体験を提供できたかなと思います。
今回はインタビューなどの具体的なユーザーリサーチをメインにしたので、そこからどのように企画や機能に落とし込んでいったかについてはあまり触れられませんでしたが、そこは次週のblogにバトンタッチできればと思います!
Gaudiyではユーザー中心のプロダクト開発を行っているので、ユーザーリサーチやデザインにご興味のある方はぜひお話ししましょう〜!🐤🐤
12/2(木)にプロダクトデザインの裏側をお見せするグループトークも開催します!
オープンオフィスやオープン勉強会もやってるので、よければぜひ〜