Gaudiy Tech Blog

Gaudiyの技術、開発組織、カルチャーについてお伝えするブログです

「全員QA」でユーザー体験を高める、Gaudiyのプロダクト開発

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こんにちは!エンタメ領域のDXを推進するブロックチェーンスタートアップ、Gaudiyでプロジェクトマネージャーを担当している小川(@zheye)です。

プロダクトの品質担保のため、どの会社もQAを行っていると思いますが、GaudiyではUX向上の一環として全員でQAに取り組んでいます。実際、開発メンバーだけでは気づかなかった視点も取り込むことができたり、全員がプロダクトに向き合う文化醸成にもつながっていると感じています。

そこで今回は、Gaudiyの「全員QA」の取り組みについて、先日の大型プロジェクトを例にしながら実践の工夫や学びをご紹介したいと思います。よければご参考ください!

※本記事は、UX向上を目的とした、QAプロセスにおける取り組みの一部になります。

1. なぜ全員でQAをするのか?

はじめに、なぜ全員でQAに取り組んでいるのか、という背景からお伝えします。

私たちが開発しているファンコミュニティサービスは、NFTや分散型IDなどのブロックチェーン技術を活用していることが特徴です。ビジネスモデルとしてはBtoBtoCなので、クライアント(IPホルダー)の要件を満たすだけでなく、ファン(エンドユーザー)の方々にとって最高の体験を届けることが重要になります。

そのため、ブロックチェーン技術を活用して顧客の課題を解決しながらも、ファンにとっては「ブロックチェーン技術を意識させない」よい体験づくりが事業のコアになっています。

簡単にいうと、ファンの方々は「ブロックチェーンを使っているから」ではなく「そのコンテンツが好きだから」コミュニティに参加したくなるわけです。

ブロックチェーン無関係
ファンにとってブロックチェーンかどうかは関係ない

そのファンの方々にとって最高の体験を届けるためには、開発フローにおいて多角的な視点を取り入れることが大切だと考えています。そこでGaudiyでは、ストーリーマッピングやDDDATDDといった開発手法を取り入れて、あらゆるステークホルダーの視点を取り込むようにしていますが、それはQAにおいても同様です。

UIテストについてはAutify導入による効率化にも取り組んでいますが、UXの観点では実際にいろんな人が触ってみることで気づくことが多々あるため、全員でQAを行っています。

Gaudiyの特徴としては、この「全員QA」が、本当に全員だということです(笑)。

エンジニア、デザイナー、プロダクトマネージャーはもちろん、コミュニティマネージャー、BizDev、人事広報、総務まで、メンバー全員で取り組んでいます。

2. 全員QAによるユーザー体験の高め方

では次に、実際の例を出しながら、全員QAの取り組みをお伝えしていきます。

2-1. 大型プロジェクト「TIF」の概要

2021年10月2日・3日に開催された「TOKYO IDOL FESTIVAL(以下、TIF)」にて、Gaudiyがオンラインシステムを開発・提供したので、ここでは実際にどのようにQAを行っていたか、どういった工夫をしていたかをご紹介します。

TIFについて簡単にご説明すると、フジテレビ主宰の毎年数万人が訪れるアイドルフェスで、今年はお台場のオフライン会場とオンライン視聴のハイブリッド開催でした。

そのオンラインシステム全般をSony Music Entertainment社と担うことになり、NFTオンラインチケットの販売、ファンコミュニティサービス、ライブ視聴、オンラインサイン会を、約2ヶ月かけて開発しました。(TIF全体については、以下のインタビュー記事が詳しいです。)

note.com

2-2. 全員が参加しやすい仕組みづくり

今回のプロジェクト全体を通じて、通算10回以上は全員QAを行いましたが、前述のとおりコーポレートメンバーも含む全員が毎回参加して、ユーザー体験をギリギリまで高め続けました。

私はプロジェクトマネージャーとして、QAの進行を取り纏めていたのですが、全員が参加するという観点では以下のようなことを意識していました。

  • QAフォーマットを作り、なにを検証をしているか一目でわかりやすくする
  • 修正のポイント、差分を明確に伝える
  • あまり検証の条件、ルールをつけすぎない

というのも、開発メンバー以外もQAに参加するということは、別業務からのコンテキストの移行が必要になります

そのため、テスト環境のURLやどういった手順で検証するのか、前回との差分は何か、といった基本的な情報が一目でわかるようなフォーマットを用意していました。

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QAフォーマット

これは、全員QAを重ねる中での改善として弊社デザイナーのTORAJIROさん(@jirosh1998)がNotionのテンプレートで作成してくれたもので、毎回活用されています。

QAに参加するメンバーは、体験が良くないものや不具合など、気づいたことをNotionのデータベースに書き込みます。記入項目としてはシンプルで、内容、デバイス/環境、追加した人の3つです。必要に応じて画面スクリーンショットもページ内に貼っています。

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実際のNotion。多いときは100以上の項目が挙がっていました。

ここで気をつけているのは、あまり条件やルールを設けすぎないことです。「こんな視点でいいのかな…」と躊躇すると気づきを挙げづらくなってしまうので、些細なフィードバック歓迎のスタンスで参加しやすい形にしています。

不具合、ユーザー体験、テキストなど、気になる部分を全てあげてもらった上で、開発チームの方で重要度と工数感から優先度を決め、実装に反映していきました。

2-3. 全員QAから実際に改善したUX例

では実際に全員QAをした結果、TIFコミュニティにおいて改善されたユーザー体験をいくつかご紹介します。

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オンライン動画の視聴ページへの行き方がわかりづらい

TIFではライブのオンラインチケットを事前販売し、当日はTIFコミュニティ内の動画視聴ページからライブ映像の視聴ができるようになっていたのですが、その導線を全員QAから改善しました。

当初は、チケットの購入完了メールや開催当日の各種リンクでのみ動画視聴ページに辿り着く導線を設けていましたが、QAをした際に「事前に購入したデジタルチケットから動画を見に行こうとした人がいた」ことから、チケットから動画視聴ページを見に行ける動線がないと困ってしまうことに気がつき、事前に対処することができました。

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特典の受け取りが他の通知に混ざっていてわかりづらい

こちらは、コミュニティアプリ内の通知タブの改善です。

当初は、いいねや返信があったときの「おしらせ」と、NFTトレカなどの特典が受け取れる「おしらせ」が共通のタブになっていました。

ですが、QAをしている際におしらせ通知をたくさん受け取っていたメンバーから「NFTトレカの受け取りが他のおしらせ通知で流れてしまう」というフィードバックをいただき、特典の受け取り通知については「プレゼント」という新たなタブを用意するという改善ができました。(今後、コミュニティ内で様々なデジタルアイテムやトークンのやり取りが生じてくるロードマップも見越しています。)

また開発のQAではないですが、キャンペーンページのUX検証も全員で行いました。

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キャンペーンページのUX検証依頼

こちらはSlack上で非同期的に行いましたが、多くの人がUX検証に参加していました。

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バックオフィス(VRゴーグルを付けた写真の方)含めUX検証に参加する様子

3. 全員QAのメリットと課題

改めて振り返ってみて、全員QAのメリットと感じている課題についてまとめてみます。

3-1. メリット

【Good】フレッシュな目線での気づきが多い

前述した通り、普段開発に関わっていないメンバーがQAに参加することで、フレッシュな視点での気づきを多く取り込むことができました。 Gaudiyでは、いろんなステークホルダーの視点を取り込む「マルチアイ(※)」を大切にしていますが、バックオフィスのメンバーも積極的に参加してくれたことで、いい意味で一般ユーザーに近い視点を事前に取り込めたと思います。

※マルチアイ…社内で利用しているパターン・ランゲージのひとつ。偏った視点ではなく、複数の視点を交えて最適解を導き出すべき時に利用する。

【Good】チームの一体感がでてくる

全員QAはプロダクトのUX向上だけでなく、組織の体験としても良かったです。開発が忙しくなると、コーポレートやビジネス系の職種の人との温度差が生まれやすくなったりするかと思いますが、全員QAでみんなで改善に向き合ったことでチーム全体の一体感がありました。全員が「このプロジェクトを成功させて、顧客にもユーザーにも良い体験を届けるんだ」という気持ちで乗り越えることができました。

3-2. 課題

【Next】開発チケットとのズレが生じる

全員が使い慣れているNotionでQAを行うことで、参加しやすくなるという利点がある一方で、Notionに挙がった項目とShortcut(社内で利用しているチケット管理システム)のチケットがズレてしまうという問題があります。今後は、全員QAの場をShortcutに移行する or チケットをきちんと登録管理することで改善できればと考えています。

【Next】人数が増えてきたときの運用の仕方

メンバーが日に日に増えている状況なので、今後はチームの分割などを検討していくことになるとは思います。ただ、なるべく小さい単位での開発を維持しつつ、必要な視点を取り入れられるように様々な視座を持っている方を巻き込むイメージでやっていきたいです。

【Next】社外の視点の取り込みやベータ版の活用

今後はコミュニティサービスの強みを生かして、一部ユーザーの方によるテストのご協力やベータ版の活用など、社外の視点の取り込みを進めていきたいと思います。(こちらは現在進行系で進めています)

4. 全員QAの現在地とこれから

課題はたくさんありますが、プロダクトに全員が向き合うという組織カルチャーの醸成につながることが、全員QAの何よりのメリットかなと思います。

TIFのプロジェクトは一旦ひと区切りつきましたが、今回の学びを踏まえて、週次のスプリントレビューにも全員が参加するようになりました。(開発メンバー以外は任意ではありますが、毎回7〜8割の人が参加しています。)

また今回、TIFのプロジェクトを乗り越えたご褒美(?)に、代表から全メンバーにOculus Quest 2が配布されたので、今後はVR会議を活用したQAにもトライしてみたいと思っています。その模様は、また別途お届けできたら…(以下の画像は、先日、コーチMTGをOculusで実施してみた時の様子です。笑)

OculusでのMTGの様子
OculusでのMTGの様子

5. さいごに

今回のエントリでは、Gaudiyの全員QAの取り組みをお伝えさせていただきました。

Gaudiy STYLE(クレド)にも言語化されていますが、メンバー全員が「All Owner(オールオーナー)」として開発に関わる。これはプロダクト開発もそうですし、組織開発においても同様です。

全員が当事者となってプロダクトに向き合うカルチャーがあるので、このカルチャーを絶やさぬよう今後も品質維持のために多くの方の視点を取り入れ続けられるように継続的な改善を行っていきます。

Gaudiyでは他にも品質改善やプロダクト改善を運用しており、課題もたくさんありますので、もし情報の共有やプロダクト改善の取り組みにご興味をお持ちの方がいらっしゃいましたらぜひお話しましょう!

meety.net

オープン勉強会などもやってますので、よければ遊びにいらしてください!

www.notion.so